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「避難訓練2.0」@ 静岡トヨペット下田店

当協会が提唱する「避難訓練2.0」が企業、教育機関にて次々に採用されています。阪神•淡路大震災、東日本大震災以降などの大災害時に、形骸化した従来のマニュアルに沿った行動では対応しきれない現状が明らかとなって久しくなりました。一瞬の判断が生死を分かつ災害の現場で、各自が危険度を判断して行動することを意識づける、それが「避難訓練2.0」です。

新しい避難訓練

地域密着型店舗を目指している静岡トヨペット下田店

企業として減災教育を取り入れ、「避難訓練2.0」を初めて実施したのは、静岡トヨペット下田店。全国の企業に先駆けて取り入れたのにはワケがあります。下田市では、M9規模の南海トラフ巨大地震が発生する確率が、30年以内に70~80%と言われています。震度6弱、津波は最大33mに達すると想定。大きな被害が予想され、地震に対する意識、備えがほかの地域に比べても高い傾向にあります。下田店が「避難訓練2.0」に取り組むのも、そうした意識の高さの現れにほかなりません。

自分にどのような被害が及ぶのか想像する力、災害想定力が重要なことを伝えた

この日行われた下田店の座学では、当協会の江夏猛史理事長が講師を務め、「減災」「防災」の違いについて紹介。減災は許容できる範囲にまで災害時の被害を最小化することと説明した上で、「防災」によって、すべての災害を未然に防ぐことは不可能であり、重要なのは事前の対策やリスクを把握することにあると強調しました。

また、江夏理事長は、下田では津波被害のイメージが強いために、地震対策が比較的弱いと言及し、本当の意味で避難を成功させるには、津波、地震のどちらにも対応する必要があると語りました。避難を成功させるために、起こりうる被害を事前に調べ出す「災害想定力」が求められることを説きました。

「避難訓練2.0」の概念図

「避難訓練2.0」は災害想定力を生かし、安全の精度を上げていく、以下の5つのステップから成り立ちます。

公の被害想定

ファーストステップは「被害から考える」ということです。そのために国や自治体が公表している被害想定を調べます。

下田市役所防災安全課を訪問。ハザードマップは自治体で手に入れることができる
ハザードマップをただもらうだけでなく、リスクの見落としや、更新された情報がないかを担当部署に確認する

被害想定を洗い出すことで、どれだけのリスクがあるのかを把握することができます。許容できないリスク=「死」を許容できる範囲の被害に抑えるための方法を具体的に考えていきます。

事前対策

国や自治体が公表している被害想定を前提に、下田店がどういったハード面の対策を講じているのかを参加者に周知。建物の耐震化の状況と非構造部材の対策状況、室内の棚やロッカーなどが金具で壁に固定されていることを確認しました。

比較のため、固定した部分とそうでないない部分をつくった

参加者にロッカーを前後に揺らしてもらい、固定されている場合、固定されていない場合で倒れやすさにどれだけの差があるのかを比較しました。固定されていない場合は「あ、意外とすぐに動く」「これは倒れそう」などと驚きを隠しきれなかった様子でした。

被害をシミュレーションする

続いて事務所、隣接する工場を見学して、想定されるリスクを洗い出し。固定されていない大きなタンクが倒れる可能性がある、壁面が剥離して落下してくる、などの危険性を確認しました。

屋外避難したその先にも危険がないか現場で確認する。一見安全に見える一時避難場所の駐車場でもリスクは存在する
普段人が立ち入らない目につかない部分にも想定外の危険が潜んでいる
考えられる危険をひとつひとつ洗い出していく
洗い出した危険の中から、許容できない危険には対策を講じる

倒れそうな什器や家具などは、地震発生時にケガの原因となるだけでなく、ドアや進路を塞いでしまい、避難を困難にする障害物になります。事前に固定しておくだけで、被害を「減」らせる。減災の典型例といえます。

減災ポイント

就業時間中にほとんど人の出入りがない物置に、大きなコストをかけて対策を講じるのは、現実的ではありません。出入りの多い空間や動線を把握することで、棚を固定するなどの対策を立てることが、より現実的であり、減災の考え方です。大切なのは対策がゴールではなく、安全がゴールです。

避難訓練で被害を回避できるかテスト

店舗従業員全員で津波避難経路を確認する。災害時お客様を含め地域の人を誘導することもあるだろう

座学を終えて避難訓練によって、被害を回避できるか実践しました。事業所内で普段通り働いている時間帯に、地震が発生したという想定です。10秒後に到達する強い揺れに備え、参加者が天井から落下物の恐れがないか、壁面や窓が割れるなどのリスクがないか、などを各自が判断して注意しながら屋外へと脱出しました。

減災ポイント

静岡トヨペットでは、避難が困難な揺れ(震度5弱以上)が想定されている全ての店舗に、緊急地震速報受信端末を導入しています。

避難経路にある二次災害が想定できる箇所

屋外に出てからは、指定の避難場所までの道のりをたどりました。移動中には、津波の高さが地形や住宅街の有無で変わる、山の斜面が地震によって崩落する二次災害が起こりうることなどを江夏理事長が指摘しました。

事前対策を見直す

今回の避難訓練2.0を実施したことで、新たに浮上した課題や見直すべき点をリストアップしていきます。洗い出した改善点を基に、ハード面の事前対策から同じサイクルを繰り返して、「安全」の精度を高めていきます。

避難経路を歩いて気づいた点などを事前対策に盛り込んでいく

店舗ごとに耐震構造や築年数、立地などはさまざまです。条件が異なる以上、かかえている危険も同じではありません。だからこそ、画一的な避難訓練、防災マニュアルではなく、危険を回避する方法が求められています。個々人が自分の判断で避難できる自主性を身につける。それが「避難訓練2.0」の狙いです。求められているのは、自分たちの置かれている状況に応じた危機管理。変わり続ける現在に対応し続ける、終わりのないアップデートが必要になります。

主催者インタビュー

「避難訓練2.0」が持つ可能性

静岡トヨペット 取締役営業本部長 星尚秀さん

社員とその家族を守るために会社として何が出来るのか、それを見極めるために参加させていただきました。ただ避難をするのではなく、避難をする前に被害を予測し十分な準備しておくことまでを、訓練するということ。これは営業活動にも通じることですし、とても印象に残りました。

「避難訓練2.0」実施を担当してみて

静岡トヨペット 本社減災対策チーム 大村義正さん

これまでは、それぞれの店舗にハザードマップを用意してもらって、それをもとに避難訓練をしておいてくださいという指示のみでしたので、人や店舗によって被害や避難に対する考え方や対策がバラバラでした。また、それをまとめるアイデアが私たちにはありませんでした。今回、減災教育普及協会さんのアドバイスで実施するポイントを明確にすることができました。

具体的には、

①被害想定を明確にする。

②避難ルートを明確にする。

③的確な情報をキャッチアップする方法を学ぶ。

といったことに絞って自ら考え、訓練できました。

お問い合わせください

安全の精度を高めてくれる「避難訓練2.0」のサイクルですが、繰り返すうちに高度な専門性を伴うようになります。安全を求めるほどに、専門家の知見が必要となるということです。新しい安全を築くために、ご相談、お問い合わせがございましたら、当協会にご連絡ください。