開催日:2019年11月25日
時間:セミナー14時30分〜15時30分
場所:足立区生涯学習施設 学びピア21
参加者:足立区教育委員会 区内小中学校教員 114名
関心事は避難訓練
今年で3回目となる足立区教育委員会さん主導の減災勉強会。今年も区内の多くの先生方がご参加くださいました。今回は学校の課題解決につながるものにするために、事前に教育委員会さんにヒアリングを行ったところ、「避難訓練で困っている」とのことでしたので、避難訓練の改善について提案をさせていただきました。
多くの先生が「問題がある」と答える避難訓練の現状
東日本大震災以降、日本の多くの教育施設では毎月のように避難訓練(防災訓練)が行われています。しかし、それを行っている多くの先生はその訓練に対し「本当にこれで良いのか?」という疑問を抱いています。今回参加された東京都足立区の小中学校の100名を超える先生方も、例にもれずそう感じていたようです。
避難訓練の問題点として先生方からよく聞くキーワードは、画一的、形骸化、踏襲型、マンネリ化などです、確かにそれも問題です、変化を嫌うのは安定を好む人間の本質ですし、教育現場という特殊な現場ではとくにその傾向が強いのも理解できます。当法人にも「今までと違う避難訓練がないか?」「面白い、楽しい避難訓練がないか?」そのような訓練の手法に関するお問い合わせが多くあります。しかし、問題の本質は手法ではないところにあると私たちは考えています。
現在の避難訓練の本当の問題点とは
多くの避難訓練を見てきた私たちが考える現在の避難訓練の問題点は、”本番で役に立たない訓練”だということです。なぜなら避難訓練が災害の実態に合っていないからです。「練習でできないことは試合でもできない」これは多くの方が納得するフレーズではないでしょうか。これは災害でも同じです。災害本番でのミスは被害につながります。最悪の場合、人のミスで人が死ぬということになるのです。本番でミスしないために行うもの、それが訓練です。訓練の中で多くの失敗を経験し、”本番で失敗しない力”を身につけなければならないのです。本番で失敗しない力とは、過去の災害から戦う相手を想像する力(災害・危険予測力)、その上で想定外事象にも対応する力(臨機応変な対応力)、それと多くの人が気づいていない訓練の大切な役割は、訓練という対策ではどうにもならないリスクを発見し、事前対策を確実に行うという事前対策の実行力です。
【悪い訓練の例:子どもも先生も成長しない訓練】 ・災害の実態に合っていない(シナリオが間違っている) ・危険・リスクの見落としがある ・先生の指示に従うだけの訓練で子どもが考えていない ・評価が、①早かった ②喋らなかった しかない ・失敗しない(成功体験させる訓練では油断する) ・何が起こるかわからないのに何をするかが決まっている
小学校の避難訓練プランニングのご依頼
勉強会に参加してくださった小学校の校長先生から、来年の避難訓練のプランニングのご依頼をいただきました。
その校長先生とのお話より
「これまでの避難訓練にずっと疑問を持っていたが、長年それが常態化している自分たちでは代案を考えることは出来ない。代案を考えられたとしてもそれが良いものかどうか評価もできない。プランニングから参加してもらい、正しい考え方のプロセスを学び他の先生方の考える力もつけさせたい。」
・1パターンではなく、年間を通してプランニングする必要があると思う ・1年生から6年生まで同じ避難訓練は変だと思う
文科省の指導とのギャップ
昨年、文科省を訪問し防災教育担当部署と意見交換をしてきました。文科省担当部署からは、「防災教育、防災マニュアル、避難訓練などについては教育委員会を通じてしっかり指示・指導を行っている。具体的な指導法については、状況によって変わるため、現場に任せるしかない。」とのことでした。そこでの話も国らしいもっともな意見でしたし、文科省が作成している指導書をいくつか目を通しましたがとても素晴らしい内容だと思いました。しかし、多くの現場の実態を見てきた私たちですが、いまだこの指導書に書いてあることを理解し実践できている現場には出会ったことはありません。
正しい避難訓練は正しい結果をつくる
勉強会を行う前と後で真っ先に変わるのは避難訓練です。具体的な対策には多くの場合多額の費用がかかります、しかし、避難訓練の内容変更には費用はほとんどかかりません。正しい避難訓練には多くの気づきがあり、その気づきは多くの成長をもたらします。避難訓練に問題があると思っている先生方、防災担当者の方、ご連絡お待ちしています。